君子は本を務む 本立ちて道生ず

 9月3日付けの朝日新聞天声人語」である。魏・蜀・呉の三カ国が覇権を争った壮大な「三国志」は、日本でも、吉川英治の小説や横山光輝の漫画などで知られ、広く愛されてきた。何を今更ではある。

 私が心を引かれるのは、魅力的な登場人物とは別に、三国志から生まれ両国で同じ意味を持つ、少なからぬ”故事成語”に寄せる想いである。例えて、「三顧の礼」「苦肉の策」「泣いて馬謖を斬る」などである。これらは、すべて深く日本文化の中に根付いている。

 天声人語の文末に、この歴史物語が1700年余の長きにわたり両国に根を下ろした根の深さを思う、とある。

 両国に通底する壮大な地平である。

日中の二つの国が、根の深さに起因する歴史を図るには、遠大な構想に待つ必要がありそうである。(了)